金原ひとみ『AMEBIC』
読み終えて頭がぐるぐるしてるので、感想が少し変かも。若干ネタバレも含みます。
金原さんの文章は、村上龍さんとか舞城王太郎さんとかと系統的にはすごく似ていて、ぐぁーっと色々描くことによって相手を押していく文体である。
金原さんの作品は全部読んだのだけれども、舞城さんとか村上さんとかと比べると、やはり若干読みづらさを感じる。読みづらいからダメだ、というのではなく、表面的に似た文章になっているけれど、それは結果として似ているだけで、その文体の過程は違うのだろうと思う。(金原さんは村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』に衝撃を受けたとインタビューで言っていて、明らかに影響を受けているとは思うが、影響を受けることと、文体が一致していることから、その奥のものまで同一であるとみなすことは出来ない)村上氏は『映画の映像を意識して文章を書いている』らしい。舞城氏はどちらかというとひたすらに饒舌に喋ることで物語の加速を狙っているのだろう。対して金原氏の文体はひたすらに訥々と語っていくことにのみ目的があり、言葉を尽くしてみますといったスタンスに思える。伝わるかわかんないからとりあえず全部喋ってます、と言った感じだ。
この作品は作中に何作も作中作が混ざりこむタイプのもので、その作中作が文学作品とは思えない悪文なのだけれども(勿論意図的に)、しかし作中の『正常な状態』に描かれたとされている『AMEBIC』の不自然さと、それを受け入れる主人公の『不自然さ』が『分裂している』ことをあらわしているようにも思える。作中作の崩壊した日本語に意味を見出すことは難しいが、無性に文章を書きなぐりたくなる衝動に関してはかなり理解できる。そしてその文章に何か意味があるのではと疑う行為もまた、理解できるものである。
今回の主人公は拒食症で、毎回そういう『自分の体に無理を強いる』女性が作品の主人公になっているのだけれど、一貫したテーマと、それを若干ぶらすことで作品ごとに味の違いは出ていると思う。
ラストへの過程は圧巻だと思います。
というか僕は結構金原氏の文章が好きなんだな。