読了

平野啓一郎日蝕
文体というものは読みやすい、というものだけではない。最近読んだ大江健三郎とか三島由紀夫とかも、わりかし読みづらい文体だったと思う。
ただ、この『日蝕』の場合はそれとは違って、読み辛い、のでは無く、読み難い、といった感じ。もっと表面的に読むスピードが上がらない感じだった。
つまり三島由紀夫とか大江健三郎みたいに、そのやたら複雑な(もしくは恐ろしく単純な)文章の意図を踏む、自分の中に嚥下するのに時間がかかるといったわけではなくて、ただひたすらに頻出する固有名詞と難読漢字のみが、物理的に読書を困難にしていたと思った。
要するに難しすぎです。(根も歯も無いよ!)
読み終わって断言しますが特に序盤はつまらなすぎる。荘厳な文体だけが空回りしてます。後半に至って幻想的なイメージを物語が浮かべるようになると(特にクライマックスのシーンなどは)、文体と雰囲気の一致が心地よくもあったのですが。
まあなので後半部分は割りと読書ペースも上がって楽しめましたよ。ただやっぱり肝心のシーンでも若干読み支える点でいかがなものかと思いますけど。
『一月物語』も読んでみることにします。