新潮2005年4月号

中原昌也『血を吸う巨乳ロボット』
本谷有希子『被害者の国』
芥川賞受賞の『土の中の子供』も掲載されているので、それは後で読みます。
中原さんは『あらゆる場所に花束が……』が余りに僕には理解できなかったのでぬあーって感じだったんですけど、『名も無き孤児たちの墓(新潮2005年8月号掲載)』が割と好みで(まあ安易な楽屋オチなんですけど)、特にタイトルの由来にしびれたのですよ。でこの『血を吸う巨乳ロボット』もかなり短い作品で、このくらいの作品だと面白いなぁと思うわけです。(『あらゆる〜』もこういう短いのを歪に組み合わせた感じだった気がしないでもないでもないでもないですね)書き散らかした感じの作品ではあるんだけど、『監視カメラに撮られてるのが気になる』とか、『ゴミが勝手に動き出しそう』とか、そういう視点は共感できて面白い。他のも読んでみようかな。
本谷さんの『被害者の国』、本谷さんといえば先日短編集『江利子と絶対』を読んだんですけど、面白かったですね。『暗狩』は乙一さんの『ZOO』っぽいなと思い、『生垣の女』は舞城さんっぽいなと思い、『江利子と絶対』はちょっとユヤタンっぽいなと思いました。いや、こういう書き方をするとすごく僕がアホっていうかおまえつくづくファウスト中毒なのなという感じですが、それは僕の読書癖が著しく傾倒してることに由来しているわけなのですが、しかし本谷さんが演劇出身であることを考えると、ファウスト系の乙一さんは映画監督志望、舞城さんは絵も描ける、ユヤタンはオタク、そのヘンを加味するとこの人たちは得てして文章が『映像的、劇画的』なのかもなと共通点を今見出しました。なるほど確かに劇画的!(これってもしかしなくても当たり前ですか) この人の文体はかなり好きな部類で、中でも比表現喩が特に好きなのです。
で今回の『被害者の国』なわけですが、新潮のサイトで冒頭部を読んで期待していたんですけど、若干オチがご都合主義だと思っちゃうのは僕がミステリもかじってるからでしょーか…。ただ、『何かになりたい』という欲望を『理由無き殺人者への憧憬』として発露させているのは上手いと思いました。その執拗なまでの模倣行為と、その模倣行為が解決に至らないことに自覚的であるっつーのは、おおー、と思いました。そういう道具立てが上手いな。半年に一作ペースらしいから、そろそろ新作出るかもしれないっすね。図書館で『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を借りてきたので読もうと思います、楽しみぃ! 単行本買うかも。