中村文則『悪意の手記』を読む

お前にどうすればなんてないんだよ。いいか、お前には、そんなものは用意されていないんだよ。どうすることもできない状態で、苦しみ続けるんだ。そのままだ。そのまま、死ぬまで、苦しみ続けろ」

絶望的でありながら、絶望的であるが故に希望を生み出している作品だと思いました。
作中の主人公の思考の密度、流れ、齟齬、とても上手いです。淡々とした文体ですが、この作品は会話もかなり良くなっており、そして文章の密度に差を作ることによって物語の起伏を作ることに成功しています。
僕はこの人が好きだなぁと思うのでした。この人は長いのを書いたらすごく面白いものができるかもしれない。今までの作品は全部結構短めで、わりに速く読める作品が多かったのだけれども。でも、長い作品だと途中で陰鬱な気分が進行しすぎてダメになってしまうかもしれない(読み続けられないかもしれない)。
いよいよ残すところは『土の中の子供』のみです。
もっと皆中村文則さんを読むといいと思うよ!