島本理生『リトル・バイ・リトル』

野間文芸新人賞受賞作。この人はかなり実力のある作家だと思います。最高傑作といわれる『ナラタージュ』は未読ですが(図書館で予約して待って借りて読まないで返したよ!)。
文章はややところどころ油断が見られますが(無駄に一文が長い、動作主がわからない)、丁寧に書いていると思いました。うむうむ、よいよい。
ただ二人がどこに惹かれているのか、というところの掘り下げは若干甘かったように思います。まぁ、メインは家族の話だから良いのかもしれないけど。それに、周くんのキャラクタがよくできているおかげで、主人公が周くんに惹かれて行く事実に関してはさほど違和感を受けませんでした。周くんが主人公に惹かれる描写にはやや不足を感じます。
まぁでも周くんのキャラは狙いすぎだと思うな! と書きますが、僕の知り合いのボクサー(キックボクサーではないけど)も割とほがらかでにこにこしている感じの子でした。そんなもんなのかもしれません。恋愛小説は余り読まない僕ですが、島本さんは薦められる作家だと思います。
解説は秀逸。本編後に付与されてすごく本編の魅力を伝える役割を果たしていると思います。