中原昌也『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』。

今日も誰もいない、暗い廊下で
誰かの足音が鳴り響く
この世界を覆い尽くす、この饐えた不快な臭いは、一体どこから来るのだろう? 暗い廊下でただひとり、そのことばかり考えてる
(「暗い廊下に鳴り響く、淋しい足音の歌」)

『あらゆる場所に花束が……』ははっきり言って面白くなくて、何この作品、なんか思いつき書いてるだけじゃん、何がしたいんだよ、と思ったのですが、短編になるとそのほとんど思いつきレベルが面白かったりするのです。ほとんど整合性とか文脈とか、そういうものを無視しきっていて、しかもそれを何一つ顧みることもない、ほとんど吐き捨てたような感じが実に良い。小説なのかといわれれば疑問ですけど、まぁこれも一種の小説でしょう。
ただこれは手馴れてないとできないことだと思います。普通の人がやったら単なるダメなものにしかならないのでは…。そこを『何となく小説かも』と思わせるレベルまで持っていかせてるのは、やっぱりすごいことなのかなぁ。
何となく楽しみどころも分かってきた感じなので、『あらゆる場所に花束が……』でも再読してみようかな。