読了

佐藤友哉『子供たち怒る怒る怒る』
名作!

・大洪水の小さな家
・死体と、
・慾望
・子供たち怒る怒る怒る
・生まれてきてくれてありがとう!
・リカちゃん人間

が、しかしこれは非常に胃にもたれる感じであります。
連続する暴力描写と鬱描写。本領発揮って感じですね。まとめ読みはオススメできないかもしれない…しかし読むのを止められない。そんな作品集です。初のハードカバーでこれってすごいよユヤタン
文芸誌掲載分は既読だったのですがせっかくの機会なので再読。
『死体と、』『子供たち〜』が初読時は一番お気に入りだったのですが、再読で『慾望』の評価が急上昇。『大洪水〜』はやっぱり習作な印象。いや極めて佐藤氏らしいんですがね。
『子供たち〜』はやっぱすごい。素晴らしい!町田さんのキャラクタがあまりに葵井巫女子にそっくりでも(語尾に「っ」をつけると葵井に見えるねっ)、文章が西尾戯言をフィーチャリングしてても名作!
しかしやっぱりそろそろそういうのから脱却して、ユヤタン文体を開拓していただきたい。体言止めが特徴かな。
しっかしユヤタンの世界観がやっぱり俺は好きだなぁ…。あ、『生まれて〜』はちょっと舞城ぽかった。おいおい。しかしユヤタンの場合はウリが文体ではなく中身なのです。だから良い。
クリスマス・テロル』以前とはやっぱ考え方が変わったな…と思いました。『鏡姉妹の飛ぶ教室』でも顕著だったんだけど、前向きになったな、と。
『子供たち怒る怒る怒る』は前向きなのか後ろ向きなのかわかんない感じがすごい良かったんですが、書下ろし二作品は両方前向きだなーと思いました(あくまで過程を省略した場合)。
まあ過程がすごいんですけどね。その過程があるからこそのラストであるからして、それがつまりユヤタンワールドに繋がるのだろうと思いました。
これは買ったほうが良いですよ!ぜひお手元に!
舞城の世界観とユヤタンの世界観を比較した場合、舞城氏はどこまでも拡がるようでありながら最終的に自己問題に帰結するのに対し(阿修羅ガールが好例)、佐藤氏は内側へ内側へ個人へ個人へと無理やりに押し込んだところはじけだしたって感じです。
両方好きですよ。